2023.09.29

埼玉営業所 産業医の先生のお話 ~大腸がん~

今回は大腸がんについてお話しいただきました。
自覚症状がある方は早急に受診しましょう!
 
 

 
 

季節ごとの朝礼で、健康について講話をさせていただいています。
テーマは季節に応じた熱中症やヒートショックなどについて、時節に応じた、新型コロナ感染症や免疫について、
そして、働き盛りの健康については欠かせないトピックである生活習慣病として肝機能障害や糖尿病について、さらに生活習慣の一部として、飲酒や喫煙などについて取り上げてきました。

今日のテーマは大腸がんです。
実はがんも生活習慣病です。
がんの発生には、喫煙、飲酒、食生活、運動不足、太りすぎ痩せすぎ、感染などの要因が関係しているからです。
なお、日本人の死因は、1950年代までは、1位が結核、2位が脳血管疾患、がんは5位でした。1951〜81年は脳血管疾患、心疾患、がんの順となっており、
1981年以降はがんが1位、次いで心疾患、脳血管疾患の順となっています。
現在、男性の2人に1人、女性の3人に1人が生涯に癌になると言われています。
がんの部位別の死因としては、男性は肺がん、大腸がん、胃がんの順に多く、女性は大腸がん、肺がん、膵臓がんの順に多くなっています。
ちなみに罹患は男性は前立腺、女性は乳がんが首位ですが、死亡率は高くありません。
そして、男女に分けずに罹患部位を見ると、1位が大腸がん、2位が肺がん、3位が胃がんです。
 

最新の2019年のデータでは、大腸がんになった人は、男性は8万7872人で2位、女性は6万7753人で2位です。男女合わせると1位になります。
 

部位別死亡数を最新の2021年のデータで見ると男性では2万8080人で2位、女性は2万4338人で1位、男女計では5万2418人が亡くなっています。
 
 
今回はがんの中でも、このように近年日本人の間で増えている大腸がんに絞って、その予防も含めてお話しします。

大腸がんも、他のがんと同様に生活習慣に関わりがあり、喫煙、飲酒、肥満等により発生するリスクが高まります。
特に近年は食の欧米化により日本人の間で増加しており、今後も増えていくと言われています。油脂や加工肉の摂取もリスクを増やします。
ただし、早期発見すれば、ほぼ治癒が可能な(早期大腸がんの5年生存率は1993年~2011年診断例で97.3%)がんです。

大腸がんは、早期の段階ではほぼ症状がありませんが、だんだんと次のような症状が出てくることがあります。
・血便、もしくは便に血が混じる。
・黒っぽい便が出る。(これは腸よりも胃や十二指腸が原因の場合が多いです)
・貧血になる。
・便が細くなる。
・便秘や下痢を繰り返す。
・腹痛や肛門痛がある。
・腹部膨満感や残便感がある。
などです。
このような自覚症状があれば、早急に消化器内科を受診してください。
痔のために上記の症状が出ることもありますが、痔と同時に大腸がんも隠れていないとも限りません。
痔があったとしても受診してください。
 
また、早期発見のためには、自覚症状が出る前に、検診を受けることが重要です。
大腸がんの場合は、まず一次検診として便潜血検査を受けて、目に見えない血液成分が便に含まれているかどうかを確かめます。
ほとんどの市区町村では、がん検診の費用の多くを公費で負担しており、一部の自己負担で受けることができます。
40歳以上の方は毎年受けるようにしてください。

がんからの出血は間欠的である(出血する時もあればしない時もある)ため、2日分の便を採取します。

便潜血検査が2日のうち1日でも陽性の場合、大腸粘膜から微量の出血をしている可能性があるため、大腸内視鏡検査で満遍なく観察します。
要精密検査となった場合は必ず大腸内視鏡検査を受けてください。
ポリープや腫瘍があれば、組織を取ってきて病理検査をして、がんであれば、開腹あるいは内視鏡を用いた手術等の治療を行います。
大腸ポリープの中でも線種というタイプは、良性腫瘍ですが、大きくなると癌化する場合があると言われ、大きさによって切除や経過観察が必要になってきます。

最後に、がん全般の予防には禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事、身体活動、適正な体形の維持、感染予防が有効であると言われています。
国立がん研究センターをはじめとする研究グループが定めた「日本人のためのがん予防法(5+1)」をHPのレジュメで図示します。
 

 
大腸がんも同様ですが、特に、意外と思われるかもしれませんが、運動は大腸がん予防に非常に効果的と言われています。
野菜や海藻、きのこ、雑穀等の食物繊維の摂取も、肥満や便秘の予防となり、大腸がん予防に効果的とされます。

まとめます。
近年日本人の死因の1位となっていて、2人に1人は生涯一度はかかると言われているがんの中でも、食事の欧米化や運動不足といった生活習慣の変化に伴い、特に増えているのが大腸がんです。
その予防としては、基本的な5+1の禁煙、節酒、バランスの良い食事(肉や加工食品ばかり食べない。食物繊維を積極的に摂るなど)、運動を心がけることとなります。
予防法でがん発生のリスクを下げることはできますが、他の生活習慣病と違い、完全に防ぐことはできません。
ただし、大腸がんは早期発見すればほぼ治癒できる疾患ですので、早期発見のための検診受診が大切です。
40歳を過ぎたら、毎年大腸がん検診(一次検診として便潜血検査、すでにがんやポリープがあったり、リスクの高い方は最初から大腸内視鏡検査)を受けるようにしてください。
以上になります。
 
 
産業医 渡辺由紀子