2022.06.24

埼玉営業所 産業医の先生のお話 ~脱水症の症状と予防~

 
今回は脱水症の症状・予防をお話していただきました。 
連日熱さが増す今日この頃、以前お話していただいた熱中症対策と合わせて
適切な予防を心がけましょう。

 
 
 
おはようございます。
梅雨のさなかではありますが、梅雨寒らしい日が続いたかと思えば、梅雨の晴れ間で高湿度なのに猛暑が続いたり、不安定な気候で、体調管理が難しい時期かと思います。
さて、今朝の朝礼講話のテーマですが、脱水症の症状と予防です。

3年前の8月の朝礼講話で、熱中症をテーマにお話したのですが、憶えていらっしゃるでしょうか。
熱中症は高温多湿環境の下で、体内の水分と塩分バランスが崩れることで、体温調節ができなくなって、高熱や頭痛めまい、だるさ、重症化すると痙攣や意識消失などを起こし、最悪は死にも至る症状の事です。
この、水分と塩分バランスが崩れるということが、まさに脱水症の状態であり、熱中症と脱水症は、状態としてほぼ似通っています。
ですので、脱水症の症状と予防法については、以前お話した熱中症の症状と予防法と重なる部分もあるのですが、少し切り口を変えてお話したいと思います。

まず、水分は大人の体の60%を占めています。子供の方がさらに水分が多く、赤ちゃんは70%近くが水分と言われています。
体の大部分を占めるという事で、水分がいかに人間にとって重要か、お判りいただけるかと思います。
ちなみに、液体として体内を循環している水分の代表的なものが血液とリンパ液です。血液は大人の体重の8%といわれており、標準体重の方で大体4-5l程度になります。

そして、血液も含めて、体内の水分は真水ではなく、各種ミネラル分を含んでおり、代表的なナトリウムと塩素に関しては、塩分濃度が生理的に0.9%となります。
そのため、脱水症は、純粋な水分不足以外にミネラル不足が原因となる場合もあります。
いずれにしても、脱水症は、水分摂取量が水分喪失量に対して不足することで起きます。
水分摂取は、基本的に口から適度なミネラルを含む水分を取ること。
水分喪失は、汗、尿、糞便などの排泄などで、発熱があれば汗や不感蒸泄が増え、また胃腸炎などで嘔吐や下痢があればまた排泄量が増えます。

脱水症の症状としては、軽症の場合、めまいやふらつき、あるいは口の中の渇きなどを感じます。
中等症になると、頭痛や吐き気、唾液の量が減ることによって口の渇き感が強くなり、尿量も減ってきます。
重症になると意識障害や痙攣などを引き起こします。

なお、脱水状態では、血液中の水分も減るので、いわゆるどろどろ血という、血液が濃い状態になり、通常よりも血管が詰まりやすい、すなわち血栓ができやすい状態になり、脳梗塞や心筋梗塞を起こすリスクも増えてきます。
通常、梗塞は、寒さで血液循環が悪くなり血圧も上がりがちな冬場に多いのですが、もともと高血圧や脂質異常症、糖尿病といった、血管リスクを抱える持病のある方は、夏場にも、脱水症が一因となって梗塞を起こす場合もあります。
健康診断の項目で、血液検査にヘマトクリットという項目があって、これは血液中の水分に対する赤血球の割合を示すもので、ヘモグロビンと同様に貧血の指標なのですが、それを参照にしていただきたいのですが、液体分の血球ということで、血液の濃さの参照にもなりえます。成人男性の場合、概ね38-48%程度、女性の場合36-43%程度が多いのですが、この数値が高めの方は、普段から水分をしっかり摂取できているかどうか、意識してみてください。

そして、脱水症の予防ですが、水分補給とミネラル補給につきます。

水分摂取については、とにかくこまめに水分を摂取することです。
一気に大量に飲むと、尿として排泄される量が増えるので、できるだけこまめに継続して飲むことです。
のどの渇きを覚え始めた時には、すでに体内の水分の2%を失っており、3%以上消失すると脱水症状が出てきますので、のどが渇く前からこまめに補給することが肝心です。
日中常に水分摂取を意識してほしいのですが、特に、起きてすぐ、運動前後や運動中、入浴の前後、飲酒後、就寝前は、かならずコップ一杯程度の水分をとるようにしてください。

また、水分の種類ですが、アルコールとカフェインを含む飲み物は、成分が脱水を促しますのでNGです。
特に夏場や運動時など、汗などで水分喪失が多い場合は、水分と同時にミネラルも失われているため、適度なミネラル補給も大切です。
熱中症予防の水分補給としては、日本体育協会では、1lの水に対して3gの塩と40gの砂糖を加えた経口補水液を推奨していますが、高血圧やその他の生活習慣病のある方の場合は、塩分と当分の摂りすぎにも注意しないといけないため、いわゆるスポーツドリンク系の飲料はできるだけ薄めて飲むか、ミネラル分を含んだ麦茶等を飲んだり、水を飲みつつ、塩飴などで塩分を補給することをお勧めします。

今の季節は高温多湿な梅雨であり、これからさらに暑い夏を迎えますが、汗をかきやすい夏場はもちろん、空気が乾燥して、肌からの不感蒸泄に気づきずらい冬場にも、脱水症は起こすことがあります。
水分補給は季節を問わず、常に心掛けていただけると幸いです。
ざっとのお話ではありましたが、これで朝礼講話を終わります。
ご清聴ありがとうございました。

産業医
渡辺由紀子