2021.05.20

埼玉営業所 産業医の先生のお話 ~睡眠の重要さについて~

今回は睡眠の大切さや質の良い睡眠のとり方などをお話していただきました。

私たちの会社では昼夜コンスタントに勤務があるため、睡眠時間の確保は自己の体調管理のうえで大切な事柄と言えます。

いつまでも元気でいられますように、ぜひみなさんの健康のヒントにしてください^^

「睡眠について」

 

睡眠の重要さについて、日常生活で取り立てて取り上げられることはないかもしれません。

衣食住という言葉の中にも、「睡眠」「眠り」そのものは入っていません。

しかし、健康に生きていくためには、睡眠ほど重要なものはありません。

「眠りは百薬の長」「睡眠に勝る薬はない」という諺もあります。

まさにその通りです。

 

少し細かい話をしますと、人間の体には「自己修復力」というものがあります。

体の細胞は常に傷ついていて、また遺伝子レベルでも日々突然変異細胞というものが生まれていますが、それらは大抵睡眠中に傷が修復され、変異細胞も淘汰されているのです。

つまり、睡眠時間は何もしていないのではなく、体が細胞レベルで自分を修復している大切な時間です。

 

また、人間の体には「体内時計」というリズム計も備わっています。

体内時計は体温、血圧やホルモン分泌等をコントロールしている大切なシステムで、これが乱れると生活習慣病のリスクも高まります。

そして、この体内時計には睡眠が大きく影響します。

 

ところで、「睡眠負債」という言葉を聞いたことはありますか?

 

本来、睡眠時間は、ある程度個人差はありますが、1日7−8時間必要です。

え?長い!と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?

日本人の平均睡眠時間は7時間に満たず、6時間で十分と考える方が一般的なようです。

しかし、世界的には、8時間が理想とされていて、実際欧米各国の平均睡眠時間は8時間に近い7時間台となっています。8−9時間寝ている方も結構います。(子供ではなく成人です。)

 

この理想の睡眠時間に足りない分は「睡眠負債」として、つまり借金状態で溜まっていきます。

負債が貯まるとどうなるでしょうか?

借金が際限なく溜まっていく場合、途中までは自転車操業でなんとかいっても、いつかは首が回らなくなります。

同じように、睡眠負債も、ある程度までは、例えば平日の睡眠不足を休日にたっぷり寝ることで補うように、返すことはできます。

ただし、返すことはできても、未来に向けての貯金はできません。

つまり、眠れる時にたっぷり寝ておけば、その後にしばらく睡眠不足が続いても大丈夫、とはいかないのです。

あくまで、それまでに溜まった睡眠不足を、たっぷり寝ることで多少帳消しにできるということです。

ただし、あまりに負債が溜まりすぎると、首が回らない状態になります。

具体的には、先にお話ししたように、生活習慣病になったり、後はうつ病など、病気になってしまいます。

また、睡眠負債が溜まった状態とは、お酒に酔った状態と同じで、思考力や判断力が鈍ってしまうため、本当は負債を溜めないよう、睡眠時間を確保するのが理想的です。

 

とはいえ、御社のように、シフト勤務があったり、日勤と夜勤を連続で行う場合があるなどには、毎日規則正しく7時間以上の睡眠を確保するのは、現実問題難しいでしょう。

そのような状況下で、できるだけ良質な睡眠を確保するためには、色々な工夫が必要になります。

 

まず、トータルの睡眠時間ですが、連続で長時間取らなくても、細切れの足し算である程度の睡眠時間が確保されればOKです。

かのナポレオンは短時間睡眠だったとの逸話がありますが、実際は会議中だろうと自室で執務中だろうと、こまめに仮眠していたそうです。

私自身も、当直勤務等で睡眠不足がち(なので人のことは言えない)なのですが、電車で座った時、食後の数分間など、短時間でもよく寝ていますし、週末用事がない時にたっぷり昼寝したりしています。

 

また、不規則勤務の際の睡眠の取り方ですが、これにはまず体内時計のリセットに重要な「光」の作用を利用しましょう。

夜間勤務の前には短時間でもいいから昼寝(もしくは夕寝)をして、起きた後はできるだけ強い光を1時間以上浴びる。夜勤明けの帰宅時はサングラスを装着して日光を避ける、などです。

 

そして、短時間でもできるだけ質の良い睡眠を取るために、寝る前(ただし直前は避ける)はぬるめのお風呂にゆっくり(といっても5−10分で構わないので湯船に)浸かる、寝る前に簡単なストレッチをする、寝る前でも日中でも良いので鼻からゆっくり吸ってゆっくり吐く呼吸法を練習してみる、短時間の仮眠からすっきり目覚めるために寝る前にコーヒーなどのカフェイン飲料をとる、などがあります。簡単な方法ばかりなので、ぜひ1つでも2つでも取り入れてみて下さい。

逆に睡眠の質を下げる方法としては、寝る直前の熱いシャワー(43℃以上のお湯は目を覚まし、41℃以下のお湯はねむりを誘います)、同じく寝る直前の筋トレ(交感神経を活発にするため眠れなくなります)、そして寝酒(アルコールは寝落ちを促しますが、睡眠自体は浅くします)などです。これらはできるだけ避けて下さい。

 

長く元気に働き続けるためにも、睡眠の大切さを改めて考えて、睡眠負債を溜めない生活を心がけていただけると、産業医としても嬉しいです。

少し長くなってしまいましたが、これで本日の朝礼講話とさせていただきます。

ご静聴ありがとうございました。