2023.01.30

埼玉営業所 産業医の先生のお話 ~生活習慣病・糖尿病~

今回は生活習慣病のひとつである糖尿病についてお話しいただきました。

前回の食事のお話と合わせて、規則正しい生活を心がけましょう!

 

 

おはようございます。

今朝の産業医講話は、生活習慣病のひとつである糖尿病についてです。

 

1)そもそも糖尿病とはどんな病気でしょうか?

 

文字の通りですと、糖の入った尿(甘いおしっこ、実際に甘い匂いがします)の出る病気、ですが、尿糖は糖尿病の結果です。

糖尿病の定義は、インスリンというホルモンが十分に働かないため、血液中の糖分(血糖)が増えてしまう病気です。

血糖値が高い状態が続くと、特に自覚症状のないまま血管が固くもろくなります。

微小な血管が障害を起こすと、三大合併症と言われる網膜症(目が見えなくなる)、腎症(腎不全となり人工透析に入る)、神経障害(感覚が鈍くなり、手足の先が壊疽する)がおこったり、より大きな血管の動脈硬化が進むと、脳梗塞や心筋梗塞を起こします。

また、血液中に糖分が多い状態は、微生物が好む環境でもあるため、易感染性といって、感染症にかかりやすく、いわゆる「免疫力が弱い」状態にもなります。

現在日本では、糖尿病の疑いがある人も含めると、1870万人の患者がいると言われます。これは成人人口の6人に一人です。

 

 

2)それでは、なぜ糖尿病になってしまうのでしょうか?

 

ここでインスリンの働きが重要となってきます。

インスリンは膵臓から出るホルモンで、体のエネルギー源である糖分を、血液中から体中の細胞に取り込む働きがあります。このインスリンの働きによって、体が糖をエネルギーとして使え、また、血糖値が上がり過ぎず一定に保たれるのです。

 

糖尿病ではこのインスリンが十分に働かなくなって発症するのですが、これには二つの要因が考えられます。

まず、インスリンの量が減ること、つまり膵臓からのインスリンの分泌低下です。

もうひとつは、インスリンの働きが弱まること、これはインスリン抵抗性と呼びます。

この二つが影響して血糖値の高い状態(高血糖)が続いてしまいます。

インスリンの分泌低下や抵抗性が出てくる原因としては、遺伝的影響もありますが、食べ過ぎ、運動不足、肥満などの環境的影響が大きいです。

 

食べ過ぎの状態が続くと、インスリンを常に出し過ぎて膵臓が疲弊して枯渇してしまいます。運動不足だと、エネルギーとして使われない糖が増えてしまい、高血糖の状態が続きます。

また、肥満の場合、脂肪組織から出るサイトカインという生理活性物質が、インスリン抵抗性を助長する働きがあります。

さらに付け加えると、残念ながら、人間の代謝機能は、歳を取れば取るほど衰えます。特に糖尿病は、50代、60代と加齢に伴って発症率が増えますので、注意が必要です。

 

 

3)次に、どのように糖尿病がみつかる(診断される)のでしょうか?

 

糖尿病になると、自覚症状のないまま、大きな合併症(目、腎臓、手足、心臓、脳など)を起こすとすでにご説明しましたが、まったく自覚症状がないわけではありません。

発症初期は、のどが渇く、また、そのため沢山水分を摂る、また、尿が近く、夜間も含めて何度もトイレに行く、といった症状が出たりします。急激に体重が減ることもあります。だるさを感じることもあります。

 

ただ、こういった症状で病院を受診して糖尿病が発覚する方は少数です。

糖尿病と診断される患者さんの多くは、健康診断で発見されます。

健診項目で、尿糖が(+)になるのは、すでにある程度糖尿病が進んだ状態です。

通常は空腹時血糖値が高値、そしてより重要な指標なるのが、過去1~2か月間の血糖の平均を示すHbA1cという項目です。

健康診断で、今申し上げた項目が「再検査」あるいは「要受診」「要治療」と判定された方が、必ず受診してください。

どんな病気も、早期発見早期治療が予後を良くします。

 

 

4)糖尿病の治療は何をするのでしょうか?

 

生活習慣病全般に言えますが、まずは生活習慣の改善、すなわち食事運動療法です。

食べ過ぎ、運動不足を避け、特に糖質の摂りすぎを控え、食物繊維や蛋白質もバランスよく食べるようにしてください。

病院を受診して、糖尿病、もしくはその一歩手前の耐糖能異常と診断された場合、管理栄養士による栄養指導なども受けられます。自己流の食事療法よりも、プロのマンツーマン指導を受けた方がより効果的なので、提案された場合はぜひお受けください。

 

食事運動療法を前提として、それに加えて、必要な場合は薬による治療となります。

昔は、糖尿病の治療は、飲み薬としては、SU製剤という、膵臓を刺激して半ば無理矢理インスリンを出させる薬しかなく、最終的にはインスリン注射を打ち続けることが多くありました。

しかし今は、色々な作用の効果的な飲み薬(一部注射薬もあります)が使えるようになったため、インスリン導入せずに、合併症を防いで、上手く血糖値のコントロールをすることが可能になりました。

 

インスリンを出させる薬もありますが、DPP4阻害薬などは、必要以上に膵臓を刺激して出し過ぎることなく、必要十分なインスリンを出させます。

また、インスリン抵抗性を改善させるビグアナイドは、最近、便中に糖を排泄する効果があることが分かりました。

尿中に糖を排泄させる作用があるため、痩せる効果のあるSGLT2阻害薬は、心不全や腎臓病にも効果的であるとして認可されています。

GLP1作動薬には、自己注射薬と飲み薬がありますが、GLP1という小腸から出る血糖値を下げるホルモンを補う薬で、強力な食欲抑制効果があります。

ビグアナイドとSGLT2阻害薬、GLP1作動薬は、正しく服用すれば、「痩せる」という効果があるため、患者さんのモチベーションが上がるという効果があります。

 

5)まとめ

 

実は糖尿病には1型と2型があり、また特殊なものとして妊娠糖尿病などがあります。1型は自己免疫疾患などでインスリン分泌能自体が破壊されているので、インスリン注射が必要になりますが、今回は、生活習慣病としての一般的な糖尿の話ということで、2型糖尿病についてお話しさせて頂きました。

 

生活習慣の改善によって、糖尿病にならないようにする一時予防が大切です。

ですが、もし糖尿病になってしまっても、健診で早期発見して、食事運動療法や適切な治療により、血糖値を良好にコントロールして、健康に生活することは可能ですし、これを二次予防と言います。

さらに、ある程度病気が進んだ状態で治療開始になったとしても、合併症の発症を食い止める三次予防の、いずれも重要です。

 

以上で本日の朝礼講話を終わります。

ご静聴ありがとうございました。

 

産業医 渡辺由紀子