2021.05.26

千葉営業所 産業医の先生のお話 ~睡眠の質~

千葉営業所の産業医の先生も睡眠についてお話いただきました。

質の良い睡眠をとるための工夫がとても分かりやすいですので

できることから少しずつ改善していければ良いですね!

菅原興業 朝礼講和 「睡眠」

 

 

今日は「睡眠」をテーマにお話しさせて頂きたいと思います。 皆さん、睡眠はしっかりと足りていますか。睡眠に満足していますか。 人は人生の 3 分の 1 から 4 分の 1 は眠っています。生まれた直後の赤ちゃんは 1 日の大半を寝て過ごします。それから成長するに従って、睡眠時間は短くなっ てきます。いくつかのデータをまとめたものを参考にすると、25 歳で 7 時間、 45 歳で 6.5 時間、65 歳で 6 時間、高齢になるとさらに短くなります。これは加 齢と共に睡眠の質が低下し、中途覚醒や入眠までの時間が掛かることが影響し ています。幼少期に睡眠時間がしっかり確保出来ないと、学力低下、集中力低下、 発達障害など、その後の成長において、様々な影響が出るとされています。それ は大人も同じで、しっかりとした睡眠が確保されないと生活習慣病のリスクや 死亡リスクの増加に繋がります。このように話をすると、寝れば寝るだけいいの か?と疑問が湧くと思います。これに関しては、アメリカで行われた睡眠時間と 死亡リスクの関係性を調査した研究によると、男女ともに睡眠時間 7 時間が最 も死亡率が低く、長くても短くても死亡率は上がり、特に長時間睡眠で死亡リス クが上がるという結果でした。一方で、「睡眠時間だけ」しっかり確保していれ ば、それだけで十分でしょうか。ここで「睡眠の質」が重要になってきます。た とえ長時間寝ても、起きた時にスッキリせず、寝た感じがしないことがあると思 います。それは睡眠の質が悪かったことが原因かもしれません。 ちなみに、最初に皆さんに問いかけた「睡眠に満足しているか。」について、世 界 13 か国で行った調査の結果、日本人は睡眠について満足している、やや満足 している、の割合が 32%と最低でした。その他の国も 50%を割る国が多かった です。大きな原因の1つは便利になった社会生活です。スマホ・インターネット の普及で、自分でコントロールしない限り 24 時間絶え間なく情報に触れ頭や体 が休まる暇がありません。自分で意識的に睡眠習慣や睡眠環境・睡眠の質が重要 であると認識し、改善に取り組まないと、知らず知らずのうちに、病気や死亡リ スクを高めてしまうことになります。なので、一度睡眠ということを意識的に見 直してみることが大切だと思います。

 

もう少し「睡眠の質」について考えてみたいと思います。 先程出て来たスマホやタブレットは液晶画面からブルーライトが発せられて います。ブルーライトには、睡眠を誘発するホルモンである「メラトニン」の分 泌を妨げる働きがあります。そのため、寝る前直前まで、スマホやタブレットを 扱っていると、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりしてしまうのです。 できれば、寝る前 1 時間はスマホなどを操作しないというのがいいですが、難 しければブルーライトカットフィルムなど貼ることで少しは緩和されます。と いうことが通説なのですが、最近実はあまり睡眠には関係ないのではないかと いう研究も出て来ているようです。もしかすると、ブルーライトが原因ではない かもしれませんが、寝る直前までスマホを操作していると、結局頭はいつまでも 睡眠モードにならず、さあ寝ようと思った時に、上手くモード切り替えが出来な いことになります。それが、寝つきが悪くなるということに繋がります。 次に、カフェインと睡眠の関係です。カフェインは脳を覚醒させる効果がある ため、寝ることに対してはネガティブに働き、寝つきが悪くなります。よく寝る 前に摂取するとよくないと言われますが、カフェインの体への影響は 5〜8 時間 持続するので、寝る直前だけでなく、その前から意識して摂取しない心がけが必 要になります。カフェインが含まれる飲み物は、コーヒーを代表として、烏龍 茶・紅茶・緑茶・エナジードリンクなどです。麦茶はノンカフェイン飲料として 有名ですが、最近はノンカフェインを謳った商品をよく見かけますので、コンビ ニなどで飲み物を手に取る時に意識してみて下さい。カフェインは全てだめか と言われると、そういうことではありません。上手く利用すると、集中力 UP や 仕事効率 UP に繋がります。あとでも述べますが、短時間の昼寝や仮眠は脳内 をリセットしてくれます。そこで、カフェインを上手く利用します。カフェイン は摂取してから 30 分くらいで効果を発揮してくるので、それにあわせて昼寝や 仮眠を取ります。具体的には、昼寝前にコーヒーやカフェイン入りのお茶などを 飲み、タイマーを 30 分にセットし、寝ます。そうすると寝起きがスッキリし、 脳内もリフレッシュされます。注意しないとならないことは、タイマーを切り、 本格的な眠りに入ってしまうことです。それを行うと夜眠れないということに なったり、逆に起きた時に頭が重く、ボーっとした感じが続き、脳内も寝たまま の状態になり、効率が逆に落ちるという負のスパイラルに入ってしまったりし ます。

 

次は、アルコールと睡眠の関係です。寝酒は寝付きが良くなると思っていませ んか。実は、アルコールはアルコールの分解によって生み出されるアセトアルデ ヒドが交感神経を刺激してしまうため、安眠には逆効果です。また、アルコール には利尿作用があるため、寝ている時にトイレに行きたくなり、睡眠の中断を引 き起こします。一度中途覚醒してしまうと、その次に寝付けないことに繋がり、 睡眠の質が低下してしまいます。 最後に、昼寝と寝る前のうたた寝についてです。先程もお話ししたように、30 分程度の昼寝は午後の仕事効率 UP など非常に有用なことが多く、「昼寝タイム」 や「午睡」として、学校でも導入が始まっています。一方、寝る前のうたた寝は 夜の睡眠の妨げになってしまいます。疲れて仕事から帰って来て、軽く一杯やり ながらソファに座ってテレビを見ながら、いつの間にか寝てしまっている・・・ このうたた寝気持ちいいですよね。しかし、睡眠全体で捉えると害になります。 本当に寝るまでの間に一度しっかり寝てしまうと、夜に本当に眠ろうとした時 に、頭が冴え、なかなか寝付けない、寝ついても深く眠れない状態になってしま います。睡眠はある程度まとまって取る必要があるため、うたた寝には要注意で す。

 

これまで睡眠の質を妨げる習慣(スマホ・カフェイン・アルコール・うたた寝) についてお話ししました。睡眠の質を上げるには、まずこれらの要因を取り除く ことです。自分の睡眠習慣について振り返ってみて下さい。こういったことを無 意識でやっていませんか?ただ、習慣なので、急に変えることは難しいと思いま す、逆に意識しすぎてストレスになってしまっては、本末転倒です。なので、ま ずは出来そうなことからやってみることをお勧めします。 最後になりますが、人は比較的多くの時間を寝て過ごします。逆に、それだけ 眠っていないと、それ以外の時間にしっかりと活動出来ないと言うことです。そして、睡眠はただ時間を取ればいいのではありません。大切なことは、「時間」 と「質」です。その二点を意識してみてください。休むべき時間にきちんと睡眠 を取り、頭と身体を休められていなければ、そのツケは必ず自分に返って来ま す。それは、ただの眠気だけではないかもしれません。仕事効率の低下によって 余計無駄な時間を浪費したり、事故に繋がったり、体調を崩し健康障害を引き起 こす可能性もあります。今回の話をきっかけに、自分の睡眠について少し考えて 頂けたらと思います。