2025.03.03
よく目にする【腸活】
実際なにをすればいいのかわからない人も多いのではないでしょうか?
今回お話いただいたことを気を付けながら食生活を見直してみましょう。
詳しくは、下記に載せますのでぜひご一読ください!
本日の朝礼講話のテーマは「腸活」です。
何らかの目的のために意識して行動することを〇〇活と呼び、「推し活」や「朝活」などがありますが、
「腸活」は、健康維持のために腸によい行動をするという意味になります。
腸とは、消化のための内臓の一部です。
あらゆる内臓がそれぞれ生きていく上で大事な役割を持っていますが、胃腸は、口から取った食事からの栄養を消化吸収することで、
体の材料を取り入れ、また活動エネルギーを産生し、そして老廃物を便として排泄するという、消化吸収排泄の役目を持っています。
口(歯)で食べ物を咀嚼し、唾液中のアミラーゼという酵素でデンプンを糖に分解し、
胃では胃液中のペプシンという酵素でタンパク質をアミノ酸に分解し、十二指腸では膵臓から出るリパーゼという酵素で脂肪を分解します。
それらの栄養素を小腸で吸収し大腸では残った老廃物から水分を体に取り戻し(再吸収)ちょうどよい硬さの便として肛門から外に排出します。
「腸活」という場合の腸は主にこの最後の「大腸」を示します。
そして、大腸において重要なキーワードは「腸内細菌」および「腸内細菌叢(腸内フローラ)」です。
そもそも、人間は最小単位でいうと細胞から出来上がっていますが、ヒトの体細胞の総数は60兆個と言われています。
最近では37兆個という論文も出ていますが、要は数十万個です。
それに対して、主に大腸(一部は小腸)に存在する腸内細菌は約1000種類100兆個以上と言われており、細胞の数よりも多く存在しています。
この多数の多種多様な腸内細菌が腸内に密集している様子を電子顕微鏡で見たときに、
花畑のように見えることから、腸内細菌叢のことを腸内フローラと呼びます。
腸内フローラの種類ですが、先ほど1000種類ほど存在すると書きましたが、それらは主に3種類に大別されます。
善玉菌、悪玉菌、日和見菌です。
善玉菌は読んで字の如し、悪玉菌やばい菌などの侵入や増殖を防いだり、腸の動きを促進したりすることで、
腸の働きをよくする役割を果たします。各種乳酸菌やビフィズス菌などがいます。
悪玉菌は、腸内で有害物質を作りだし、増えすぎると便秘やガス腹、下痢など、お腹の調子を崩します。
日和見菌は、上記どちらにも属さず、善玉菌と悪玉菌の、その時優勢な方の味方をします。
この3者のバランスが重要で、「腸活」は主にこのバランスを整える行動ということになります。
では腸の働きとはなんでしょうか?
大腸には、先程触れた、消化の最終段階の水分吸収と排泄(デトックス)という役割があります。
この働きがうまくいかないと、便秘や下痢になり、血液中にも腸内の腐敗物質が流れ出すため、
肌トラブルも出てきます。美肌にも腸内環境が大事ということです。
消化の働き以外にも、さらにもうふたつの役割があります。
ひとつは免疫です。
実は腸内には、全身の免疫細胞の6−7割が集中しており、脳よりも多く、
腸内の免疫細胞が腸内細菌と密接に関係しつつ、全身の健康を司っているのです。
もうひとつは精神安定です。
いわゆる「幸せホルモン」と言われる、喜びや快楽を伝える脳内伝達物質のセロトニンは90%が腸内で産生され、腸内に存在します。
腸内環境が悪化してセロトニンが少なくなってしまうと、キレやすくなったり、うつ状態になったりします。
では、本題の「腸活」についてお話しします。
腸内フローラのバランスを理想的に保つにはどのような方法があるのでしょうか。
まずは、食事面からです。
悪玉菌は動物性タンパク質や脂質の多い環境下で増えますので、肉魚油ばかりではなく、
野菜や食物繊維も含めたバランスの良い食生活を心がけるというのが基本となります。
善玉菌を増やすためには、善玉菌そのものを含むプロバイオティクスという食品群、
善玉菌の栄養となるプレバイオティクスという食品群を積極的に取るのもおすすめです。
プロバイオティクスには、ぬか漬けや納豆、味噌、キムチ、ヨーグルト、チーズなどの発酵食品や
整腸剤(ミヤリ酸や乳酸菌など様々な種類)があります。
日本人には、昔ながらの伝統的な発酵食品であるぬか漬けや味噌などがおすすめですが、塩分が多い場合が多いので、
特に高血圧の人は注意しながら取り入れてください。
プレバイオティクスは、食物繊維とオリゴ糖です。
食物繊維でも水溶性食物繊維が腸活には有効で、野菜(人参やゴボウなどの根菜類や、キャベツやほうれん草などの葉物野菜)、
豆類(納豆や豆腐など)、海藻(海苔やワカメなど)、キノコ(椎茸やしめじなど)、くだもの(キウィやみかんなど)があります。
オリゴ糖が多く含まれる食品は上記と重なりますが、玉ねぎやゴボウなどの野菜、大豆などの豆類、バナナなどの果物に多いです。
また、食物繊維を有効に利用するためにも、水分をしっかり摂ることも大事です。なお、アルコールとカフェインを含む飲み物は、
この場合の水分には含まないことに注意してください。
食事以外では、自律神経を整えるために重要なのが、睡眠です。
腸の動きは、自律神経で調節されており、副交感神経が優勢な時に活発になります。
副交感神経は睡眠時に優勢となるため、リラックスして、質の良い睡眠時間を確保しましょう。
また、自律神経を整えるためには、疲れやストレスを解消することも大事です。
疲れやストレス解消の一環として、運動も取り入れましょう。
腸の蠕動運動(お通じ)のためには、腸腰筋を動かしたり、腸を刺激することも必要なので、
ウォーキングや縄跳び、トランポリンなどの運動がおすすめです。
もう一つ、便秘を防ぎ、毎日の排便で快腸をキープするために毎朝トイレタイムを確保して、
さらにトイレで便の性状(量や色、硬さなど)を観察してください。
要は、腸活も、これまでに朝礼講話で取り上げたことのある他の生活習慣病の対策と同様に、
食事・運動・睡眠といった生活習慣を整えることが基本となります。
ただし、あまり厳しく義務化してしまうと、それがストレスとなり、腸内フローラに悪影響を与えてしまうため、
無理ない範囲で取り入れていってください。
腸内フローラを理想的なバランスに保つことで、大腸ガンの予防、美肌、免疫、精神安定といった心身の健康を保ちましょう。
以上で今日の朝礼講話を終わります。ご清聴ありがとうございました。
産業医 渡辺 由紀子