2020.10.20
埼玉営業所で産業医の渡辺先生が新型コロナウイルス感染症についてお話してくださいました。
先日同じく千葉営業所でも池田先生からお話がありましたが、なかなか終息せず特効薬もない中で
再度この感染症について詳しく聞かせていただくことができました。
正しい知識と対策でこの冬も乗り切っていきたいですね。
新型コロナウィルス感染症について
おはようございます。お仕事お疲れ様です。産業医の渡辺です。
昨年夏の朝礼時に熱中症について、そして年明け1月はヒートショックについてお話させていただきました。その後、新型コロナウィルス感染症が中国武漢で問題となり、日本ではクルーズ船問題が発生、あっという間に世界中を席捲しました。
コロナウィルス自体は昔からある風邪のウィルスの一種ですが、正式名称SARS-COV2という今回の新型コロナウィルスは、数年前にアジアで発生したSARS、中東で発生したMARSと同様、古典的なコロナウィルスの変異したもので、通常亡くなる事はない古典的なコロナウィルスと違って致死率が高い新型の未知のウィルスという事で、当初から警戒されると同時に様々な研究が進んでいます。
当初から今までの間にわかってきたことは、感染力が強いということ、特に高齢者や持病のある方では致死率もインフルエンザより高いということ(ただし、年齢にかかわらず致死率の高かったSARSやMARSに比べたら非常に低いです)、どうやら欧米人とアジア人では重症化率や致死率に差がありそうだということです。
感染症というのは、その原因となるウィルスや細菌の感染力の強さ(感染力)と、かかった時の症状のひどさ(病原性)と、そしてかかる人の免疫力によって、病原体と出会ったときにその病気にかかるかどうか、そして、かかってから症状がどのように出て推移していくかが決まります。
新型コロナウィルスの場合、感染力は上記の通り、インフルエンザなみに高そうということになっていますが、ただし感染しやすい状況としては、密閉された空間に、人が密接した状態でいる状況が想定されています。
そのため、当初から、三密を避けるということと、換気の重要性が言われています。
また、飛沫感染(口から出たしぶきによって感染する)と接触感染によってうつるということで、三密と換気ともうひとつ、手指消毒が対策として挙げられています。
また、飛沫を周囲にまき散らさないよう、公共の場所(バスや電車や会社など)では、マスクの着用もマナーとして推奨されています。
ちなみに、私は現在フリーランスの医師として、埼玉と東京で主に勤務しつつ、北海道、東北、関東、東海、近畿、四国、九州の離島等でも診療や健診を行っておりますので、私が見て感じた範囲での各地の状況と対策についても簡単に触れたいと思います。
都道府県あるいはその中での市町村ごとに、新型コロナウィルス感染症(ウィルス名と同
じく、こちらは日本での呼び名で、世界ではCOVID19、すなわち、2019年に発生したコロナウィルス病と呼ばれています)のPCR 検査陽性者数や入院者数にかなり差がありますが、かなり大雑把に言うと、やはり人口密度の少ない県ほど数が少なく、ただし数が少ない県ほど、手指消毒やマスク着用、あるいは三密対策として公共機関の閉鎖や制限等を厳しく行っている印象を持ちました。また、感染者の感染経路も、感染者が少ない県ほど、経路不明者はほとんどおらず、ほぼ完全にトレースされております。
ちょっと脱線しましたが、おそらく皆さんが一番気になさっているであろう、予防策について再度お話して、講話を終わろうと思います。
すでにお話した飛沫感染についてですが、通常の風邪やインフルエンザでは、主に咳やくしゃみによるしぶき(飛沫)が原因となりますが、新型コロナウィルスの特徴として、唾液の中のウィルス量が多いということで、他の疾患よりも際立って、飲食時での感染が多くなっています。いわゆる飲み会や家庭内感染等、狭い空間でお互いに非常に近距離で唾を飛ばして会話しつつ同時に飲食をしている状況です。
それを防ぐためには、換気と三密回避に留意するとともに、特に飲食の場では、隣りあわせや向かい合わせの近い距離で座らず、できれば一方向もしくは互い違いに、距離を開けて座ること、また、飲食時はできるだけ会話をせず、飲食が終わってからお互いにマスクを着用して会話することが推奨されます。
また、接触感染については、指につくだけでうつるわけではなく、指についたウィルスをそのまま口や鼻、あるいは目といった粘膜にもっていってつけてしまうことでうつってしまいます。ウィルスは皮膚からは侵入しません。粘膜から侵入するのです。
ですから、手が荒れるほど頻回にアルコール消毒をするよりも、食事前にしっかり石鹸で手を洗う、また、トイレの後もしっかり手を洗うことを習慣化する事、また、顔を触るくせがある方は、それをなくすことです。
最後に、例年ですと、これからインフルエンザが増えてくる時期です。
通常、ウィルスに二種同時に感染することは少なく、昨年インフルエンザ感染者が例年にくらべて非常に少なかったのですが、その理由として、暖冬であったことと、実は日本も含めたアジアですでに新型コロナウィルスが流行しており、そちらにかかっていた人が多かったせいではないかと言われています。
残念ながら、まだ新型コロナウィルスのワクチンは完成しておらず、特効薬というのも、そもそもが風邪なので、そんなにすぐ出てくるとも思えません。
初期症状としてコロナもインフルエンザも似ていて紛らわしいので、少なくともワクチンのあるインフルエンザは防ぐようにした方がいいと思います。
また、お話する時間があまりなくなってしまいましたが、感染防御のために、換気や3密対策、手指消毒や飲食時の対応といった対処法と同時に、自分自身の免疫力を保つこともとても大切です。
自身の免疫力を保つためには、一番は睡眠をしっかりとる、二番は栄養、バランスの取れた食事。そして三番、適度な運動です。
不幸中の幸いというか、皆がコロナ対策で気を付けているせいか、今年は例年より圧倒的に風邪をひく方も少なくなっています。
インフルエンザも風邪患者も増えてくるこれからの時期、引き続き感染防御対策を皆さん個人個人がとることで、高齢者や持病を持った方という、新型コロナで命の危険がある方々を守っていきましょう。
また、この中で持病を持った方々もいらっしゃることでしょう。持病については、治療を受けてしっかりコントロールされていれば、コロナのリスクも減ります。
薬を飲み忘れない、食事運動療法もしっかりする等、それぞれの主治医の治療を途切れなくうけてください。
朝から貴重なお時間を頂戴してありがとうございました。