2020.08.31
千葉営業所で産業医の池田先生が新型コロナウイルス感染症についてお話してくださいました。
気になる検査の方法や今後どのように向き合っていけばいいかなどとても分かりやすい説明でした。
ぜひ一読ください!
「新型コロナウイルス感染症について」
おはようございます。
皆様、お仕事お疲れ様です。
産業医をさせて頂いています、池田です。
振り返れば2020年1月に日本国内でコロナウイルス感染が確認され、それ以降クルーズ船問題や3月に入ると国内でも多くの感染者が確認されるようになり、4月には緊急事態宣言が出されました。一時下火になりかけましたが、7月に入り感染者数はまた増加し、ある程度の感染者数を保ったまま今に至ります。コロナウイルスに振り回され、この先もまだ終息は見えていません。
今日はその新型コロナウイルスについて、何が他のウイルス感染症(特にインフルエンザ)と違うのか、感染経路について、検査について、そして今後について、の項目に分けてまとめてお話しさせて頂きます。
まず、何が他のウイルス感染症と違うのか、
インフルエンザに罹ったことのある方は多いと思いますので、インフルエンザと比較してお話します。まず、症状ですが、インフルエンザは高熱・関節痛・風邪症状が主なものです。コロナウイルスは発熱に加えて味覚・嗅覚障害を伴うことがあります。症状が出るまでの期間は、インフルエンザは感染後短期間1-2日ですが、コロナウイルスは1-14日(平均5,6日)と言われています。また、インフルエンザは感染すると多くの人に症状が出るとされていて、症状のない無症状感染は10%程度とされています。一方で、コロナウイルスは多く見積もると無症状感染が60%程度あるとされています。そして、無症状でも他人へ移す可能性のあるウイルス排出は多いです。そのウイルス排出のピークはインフルエンザでは発症後2,3日(最も症状が辛い時)ですが、コロナウイルスは発症1日前(つまり、全く症状のない時)とされ、発症3日前からウイルスは排出されています。インフルエンザには治療薬が各種ありますが、コロナウイルスには依然として特異的な治療法は確立していません。
ワクチンも同様で、インフルエンザでは毎年ワクチン接種が推奨されますが、コロナウイルスには有効なワクチンはありません(ロシアではワクチンが承認されたようですが、効果についてはまだはっきりと分かりません)。
特徴をまとめると、インフルエンザは罹ると1-2日で症状が出て、もしその段階で病院へ行き治療を行えば、ウイルスを最も移しやすい期間は仕事や学校は休んで療養し、治った頃には人に移さない状態で社会生活に復帰出来ます。比較的流れがわかりやすい感染症です。
しかし、コロナウイルスは、そもそも無症状が多いため、無自覚にウイルスを拡げている可能性があります。もし、発熱や味覚症状が出たとしたら、その時点で既にウイルスを撒き散らしていた可能性が高い訳です。感染の可能性はその前の1週間程度の生活の中にあると思われるため原因の特定をすることが極めて困難です。人々の生活に入り込み、悪さをする、極めて厄介な感染症と言えます。
感染経路について、
感染しないためには、どのように感染するのかを知ることが大切です。コロナウイルスには、最も多い飛沫感染、次に接触感染、そして3密空間による一時的な空気感染の3つの感染経路があります。
飛沫感染は、ウイルスに感染している人が会話や咳・くしゃみをした際に、鼻や口から飛び出す飛沫が1〜2メートル以内で向かい合っている人の鼻や口から吸い込まれたり、目に入ることで感染する経路です。それを防ぐために、マスクを着用して会話をすることが重要です。
接触感染は、ウイルスで汚染されたものに触れた手で目や鼻や口の粘膜に触れることで感染する経路です。それを防ぐために、頻繁に手洗いやアルコール消毒を行うことが重要です。手についたウイルスは流水による15秒の手洗いで1/100に、石鹸やハンドソープで10秒もみ洗いし、流水で15秒すすぐと1万分の1に減らすことが出来ます。すぐに手洗いが出来ない場合はアルコール消毒も有効で、70%〜95%のエタノールを用いてよく手にすり込むことが大切とされています。また、コロナウイルスはプラスチックの上には3日間程度残存するとも言われています。ですので、ものに付着したウイルス対策として、80℃の熱水に10分間さらす、次亜塩素酸ナトリウム、洗剤、次亜塩素酸水などが有効とされています。人間の手指消毒と物の消毒は使うものが違うので消毒であればなんでもいいという訳ではありません。詳しくは、厚生労働省のホームページに「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」として記載されていますので参考にして下さい。
最後に空気感染は、3密空間では一定期間ウイルスが空間内に滞留すると言われており、これを吸い込むことで感染する経路です。それを防ぐには3密回避が絶対的な条件となります。
検査について、
現在の感染を見るPCR検査、抗原検査、以前の感染を見る抗体検査があります。
コロナ感染が疑わしい場合(発熱・咳などの感冒症状、味覚・嗅覚障害)は、公費で検査を受けられるようになっています。検査は、現在は帰国者・接触者外来だけでなく、様々な医療機関で受けられるようになっていますが、事前に確認の連絡をしてからの受診が望まれます。もし、無症状でも検査を受けたい場合は、インターネットで検索すると検査を受けられる医療機関が出てきますが、自費で数万円掛かるようです。また、コロナウイルスに罹ったことを証明するという抗体検査もありますが、コロナウイルスはそもそも抗体があれば絶対に2度と罹らないと言うものではないようなので、もし受けようと考えている場合はよく考えた方がいいかもしれません。
もし現在の感染をチェックするためのPCR検査、抗原検査を皆さんが受けたとします。そこで、陰性と出たら、よかったコロナウイルスに感染していない!と皆さん考えると思います。しかし、この検査の問題点は、検査で陰性だった場合でも、もしかしたら陽性(コロナウイルスに感染している)かもしれない可能性がある程度の割合で含まれていると言うことです。100%の保証をしてくれる検査ではないと言うことを頭に入れておかないといけません。ちなみにインフルエンザの検査も同じで、陰性であっても病気でないことを証明するものではありません。
今後について、
新型コロナウイルスによって、人々の日々の生活や仕事のあり方は大きく変わりました。人との接触を避けることで、感染リスクを下げることが出来るため、3密(換気の悪い密閉空間・多人数が集まる密集した場所・間近で会話や発声をする密接場面)を避けた行動が重要だと言われています。しかし、いつまでもその生活様式を維持することは、経済へ大きな影響を及ぼすため、少しずつ緩和の方向で進んでいます。しかし、感染者数の再上昇を認めたりと一筋縄に行かないのが非常に悩ましいところです。全世界の統計としてある程度一致していることは、高齢者や心血管疾患・糖尿病や肥満がある場合に致死率が上がるようだということです。しかし、どのような感染症でもこのような基礎疾患を持った人では命に関わることがあるため、コロナウイルスに限ったことではないとする見方もあります。これから冬に向けて、コロナウイルス対策をしっかり行わなければインフルエンザの流行と合わさり、大変なことになるのではとする意見もありますが、逆にコロナウイルス対策を継続することでインフルエンザの流行も抑えられるとする意見もあります。専門家の中でも今後の対策や生活のあり方などで意見が分かれる点もあります。そのため人々のコロナウイルスへの考え方もまたそれぞれです。「コロナウイルスを恐れ過ぎず正しく恐れる」難しいことですが、これが最も大切なことです。